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2024.10.21
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2024.10.21
日本テレビ系列で毎年、放送されている人気番組『鳥人間コンテスト』。琵琶湖の特設プラットフォームから自作の人力飛行機が滑空し、飛行距離を競う。アウトソーシングテクノロジー鳥人間サークル「Flower’s Factory」は、2018年からこの大会にトライし続けている。台風接近の天候不順で出場を断念した年、コロナ禍で大会が中止になった年、書類審査を通過できなかった年、チーム記録である193.53mを飛んだ年…と、これまでさまざまなドラマがあった。今回は、2024年7月に開催された大会に挑んだメンバーの中でもリーダーを務める6名に集まってもらい、座談会を企画。このプロジェクトを通して、エンジニアとして何を得たのか、語り合ってもらった。
[参加者] ※()内、所属およびチーム内担当、敬称略
■和泉 博(機電事業本部 堺東支店 / 2024年パイロット)
■渋谷 雄太(機電事業本部 豊田支店 / 設計班 班長)
■片桐 宙平(機電事業本部 神戸支店 / コクピット班 班長)
■平田 和己(機電事業本部 堺東支店 / 電装班 班長)
■柳生 武広(機電事業本部 プロダクト開発課 / 関東エリア責任者)
■福井 善亮(ITエンジニアリング事業本部 札幌システム課 / 北日本エリア責任者)
和泉 そうですね。まさに鳥になったような景色が目に映りますから。でも、それに負けず劣らず、ダイエットに成功したときも、自分自身に感動しましたよ(笑)。3年前、健康診断で「メタボ予備軍」と診断されてしまいました。その時、「鳥人間コンテストのパイロットが務まるくらい、カラダを絞ろう」と決意。その目標が叶い、前回に続けてパイロットに選んでいただきました。
渋谷 私の場合、機体が離陸した後、両翼がイメージ通りに“そり返った”のを見た瞬間です。機体の設計担当者として、今回、最も力を入れたのは、機体に全長30.3mの主翼を採用したこと。前大会の機体よりも6mほど長く、私たちが参加している「滑空機部門」でも歴代最長でした。ねらいは色々とあるのですが、一番は「OSTechのエンジニアチームの技術力を見せつけたい!」と考えたことです。長い翼がそり返る姿は、「飛んでいる」というより「優雅に舞っている」ようで、とてもユニーク。「これを作り出せるのは、私たちだけだ」という自負があります。
片桐 私もエンジニアとして、今回の機体を実現できたことに感動しています。約120m滑空し、湖面に着水した瞬間、長い翼が着水の衝撃を受けても折れなかったこと。加えて、パイロットが怪我なく帰還し、機体の安全性を示せたこと、これらはエンジニアリングの勝利です。私は主にコックピットの製造を担当したのですが、今回からフレームの素材をアルミからカーボンに変更。前回の機体比で、約3分の1まで軽量化を図りました。これまで扱ったことのない素材で、しかも長い翼を取り付けるので、接合部の位置決めと接合強度の確保には、特に苦労しましたね。
平田 私の場合は、機体が無事、琵琶湖の上空に飛び立ったときに、大きな感動がありました。私は、主に垂直尾翼についている方向舵の電装を担当。スイッチや継電器の動作不良を起こさないようにするため、今回は特に「チャタリング対策」に注力しました。基板回路図を書き直し、部品同士のノイズを低減するように工夫したのです。大会関係者から「基板から製作したチームは他にない」と聞いたので、エンジニア冥利に尽きますね。わずか半年間での製作だったので不安でしたが、当日、無事に機体が飛び立ち、安定飛行に移ったのを見てホッとしました。
柳生 私はむしろ、飛び立つ前、離陸するためのプラットフォーム上に立つ機体を眺めたときに、感動しましたね。私は主に機体の組み立てに携わったのですが、OSTech全国の社員から届いた応援メッセージが書かれていて。「きっと夢は叶う」「大空へ羽ばたけ!!」「優勝」など。社員のお子さんからのエールもありました。大会当日、あらためて機体に書かれたメッセージを一つひとつ読んでいたら、泣きそうになりましたよ。
福井 私が感動した瞬間は、その少し前。プラットフォーム上に機体を移動させているときです。私は翼の骨組みであるリブの製作を担当しましたのですが、チームメンバーが全国各地の拠点に散らばっていて、別々に製作作業をしている。それにも関わらず、“阿吽の呼吸”で連携が図れていて、効率的に組み立て作業が進んでいくんです。私は札幌支店所属で遠方なので、特にそう感じました。そして大会当日に参加できたメンバー全員で、完成した機体を運ぶ際も、誰かが指示を出した訳でもないのに、自然と歩幅が合っている。信頼し合っているチームだからこそだと思いました。
渋谷 機体の素材をアルミからカーボンに変更し、主翼を長くしたことで、エンジニア泣かせなところが多々ありました。例えば、私が担当した機体設計では、強度の評価方法や強度試験のやり方から考えなければなりませんでした。検討の末、パーツごとに分割して強度を評価することに。試験としては、翼の下に水を入れたペットボトルをぶら下げて、強度を確かめていきました。
片桐 コックピットと主翼の接合でも、カーボンという新たな素材への挑戦が課題になりました。例えば、接合方法。アルミの場合はステンレスバンドで締めて取り付けたのですが、カーボンだと割れてしまう。そこで、コクピットと主翼、それぞれの接合部分にプレートを取り付け、それを接着してからボルトで接合する方法を採用。エンジニアとしての経験や勘を頼りに、接合方法から手探りで考えて製作していくプロセスは、すごく楽しかったですね。
柳生 私は、リブ製作を担当している福井さんから「知恵を貸してほしい」とリクエストされたエピソードを紹介します。リブには、発泡スチロールのスタイロフォームという素材を使うのですが、それを直角に切る治具が「見つからない」と。若手メンバーと試行錯誤し、たどり着いたのが、100円ショップの野菜スライサー。他部品と組み合わせて試したところ、だれでも正確にカットができました。メンバーの奇抜なアイデアには驚かされることも多く、よりよいものができたことにはモノづくりのおもしろさを感じています。早速、福井さんに伝えたところ、とても喜んでもらえました。
和泉 安全面に配慮する意識でしょうか。私は、いま建設機械メーカーのプロジェクトに携わっていて、建設機械の実験・評価を担当しています。ちょっとした部品の変更であっても、安全性に問題がないかチェックするのが仕事。今回、「壊れない機体」を製作することに携わり、私自身がパイロットとして参加したことで、「安全性を確保するために、エンジニアとしての知識や経験を総動員して、万全を期す必要がある」という意識が、よりいっそう高まりました。今後、業務にも活きてくると思います。
平田 私の場合、尾翼の製作に当たって、カーボンファイバー3Dプリンターを使用したことです。私はメーカーのプロジェクトで、3DCADを使って大型トラクターの部品を設計する業務に携わっています。設計に携わるメンバーの大半は3Dプリンターの使用経験がないのですが、今後、必要となってくると思います。今回、使ってみて「熱や光によって積層方法が変わる」など、さまざまな知見が得られたことで、プロジェクト内で重要な役割を果たせそうです。
福井 私は「エンドユーザー視点で設計する」ということを学ぶことができました。現在、半導体の回路設計に携わっているのですが、これまでは目の前の設計作業をうまくこなすことだけを考えていたように思います。しかし、『鳥人間プロジェクト』で私が手掛けたリブ製作では、「そのリブが機体を構成する」「その機体が空を飛ぶ」「その後に着水しても壊れない」というところまで見据えて作業しました。私の担当した工程がエンドユーザーにどのように貢献するのか、その点を想像することに「エンジニアとしての楽しみがある」と改めて実感しましたね。
和泉 みなさんもOSTechの『鳥人間コンテスト』チーム、「Flower’ s Factory」に参加していただきたいです。私自身がそうだったように、必ず自己成長に繋がると思います。興味を持った方は、機体を組み立てる尼崎の工場の見学に来てください。疑問や質問も受け付けています! 私たちのチームの専用メール(f-factory@ostechnology.co.jp)まで、ご連絡をお願いします!
渋谷 今回、長い翼や新しい素材に挑戦したように、『鳥人間コンテスト』では、常にチャレンジを続けています。一緒に参加すれば、エンジニアとして成長する上で貴重な経験が得られるはずです!「何か新しいことにトライしてみたい」というエンジニアは大歓迎。資格や条件は問いませんので、ぜひ、参加してみてください。
片桐 この記事を読んで、興味を持っていただいたら、YouTubeに大会当日の実況中継がアップされているので、見ていただきたいです。きっと、感動してもらえると思いますし、参加したくなると思います!
平田 YouTubeでもTVでも見ていただければ、OSTechがモノづくりの「プロ集団」であることがわかると思います。設計、製作、評価など、モノづくりの全てのプロセスを経験できるので、前向きにチャレンジしてほしいですね。
柳生 子どものころから見ていた『鳥人間コンテスト』ですが、実際に参加してみると、とても学びが多い。仕事とは全く違う環境で、自由に発想し、意欲的に取り組めるプロジェクトですから、エンジニアとしての力が身につきます。特に「こういう技術スキルがある人」という条件はありません。ハサミが使えるだけもいいです(笑)。まずは、所属部署の近くの作業場を見学してください。東京近辺であれば、小田急線の愛甲石田駅から5分の場所にありますよ。
福井 特に、若手エンジニアの参加をお待ちしています。いろいろな経験を持つエンジニアと交流できるので、経験の浅い人は勉強になることが多いはずです。ひとりでも多くの方が参加してくれることを、心から願っています!