Blog

|

2021.11.08

【イベントレポート】地方創生プロジェクト 和歌山県串本町「自動運転車の社員向け取扱トレーニング会」

先日、WEB社内報でも紹介した地方創生・MaaS事業推進課が主催する「自動運転車の社員向け取扱トレーニング会」が、和歌山県串本町で開催されました。この取り組みは、南紀スーパーシティ構想に関わる会合で出会ったある人物が中心となって、地元や自治体のみなさまの絶大な協力があって開催されたもの。単なる社内研修の枠を超えて、地域に大きなムーブメントを起こしました。魅力的な町の人々とともに、どのような取り組みだったのか紹介します。

自動運転車に関わる技術者を養成

「自動運転車の社員向け取扱トレーニング会」は、7月12~16日までの日程で、和歌山県串本町の串本古座高校旧古座校舎で開催されました。参加したのは、2021年新卒者を含む大阪、神戸システム課の4名。協力企業から自動運転車をリースし、基本動作からトラブル対応まで、実車を使用してのトレーニングが行われました。
研修の概要を読んで、「で、なんで和歌山県串本町なの?」と疑問に感じられる方がほとんどだと思います。

串本町は、本州最南端、人口15,000人ほどの小さな町です。主な産業は第一次産業と観光業。過疎化も進んでいます。しかし今、宇宙ビジネスの新たな中心地になるのではないかと注目が集まっている場所なんです。その理由が、日本初の民間小型ロケット射場の建設予定地に決定したこと。2021年度中には初の民間小型ロケットが発射される予定で、今後拡大が予測される宇宙ビジネスで、町は盛り上がっています。

で、なんで串本町?

以前WEB社内報でもご紹介したとおり、地方創生・MaaS事業推進課は、地域に貢献するプロジェクトを展開しています。(https://www.ostech-online-magazine.com/message/20211025_1/)その一環として、ビッグデータやA Iを活用して、分野の垣根を越えたデータ連携によって住民が抱える課題を解決するスーパーシティ構想に着目。テクノロジー×人×自然×文化「未来観光の町」を作るとしている南紀スーパーシティ構想(仮称)の連携事業者に応募しました。

そこで出会ったのが、今回のトレーニング会を成功に導くキーマンとなった株式会社古座MORI代表取締役の坂本直弥さん。坂本さんは、フィリピンを中心に、海外進出する企業をサポートする会計事務所を運営する傍ら、海外客を対象としたコーディネーターを務めるなど、多彩な活動を行っています。大学時代にフィールドワークに来たことがあるという南紀に、Yahooオークションが縁で山林を購入。それがきっかけで串本町に住み始め、地域の魅力を発信し、ワーケーションなどをプロモートする会社を立ち上げたパラレルワーカーです。

「会議でたまたまOSTechの担当の方と隣の席になったんです。交通の便が悪いので、駅への送迎も兼ねてこの地域(すさみ町・串本町・古座川町)をご案内しました。このサテライトオフィス古座(古座MO R Iが運営するシェアオフィス)の近くだったので、串本古座高校の旧校舎にもお連れしました。そこでビビっときたみたいですね」。というのも、すでに地方創生・MaaS事業推進課で、自動運転車の社員向け取扱トレーニング会の実施を構想しており、開催場所を探しているところだったとか。まさに運命の出会い!
坂本さんが、古座高校跡地再活性化協議会のメンバーでもあったことから、協議会や自治会への協力を取り付け、和歌山県、串本町、地元警察…自治体・公共団体のご協力、たくさんの申請を経て、実施に漕ぎつけました。地元を愛する人との出会いが、串本町での開催の理由でした。

サテライト古座を運営する古座M O R I代表取締役の坂本さん(左)と担当者の堤さん(右)

トレーニング会はお天気との戦い 避難場所は自治会館

今回、使用した車両は、ゴルフカートを大きくしたような電動自動車。そのため、雨天では実施できません。また、今回お借りした施設は串本古座高校の旧校舎にあるグラウンドだけ。校舎は使用することができないことから、雨天の際の座学を行う場所として、旧校舎の目の前にある中湊地区の自治会館をお借りしました。

古座高校跡地再活性化協議会のメンバーでもあり、自治会の役員を務める室 宣行さんは「これまで、旧校舎は図書館として使用できないか、避難場所としてはどうかなどの構想はありましたが、電気が止まっているので活用が難しかった。今回のトレーニング会のお話を聞いて、自動運転はこれからのトレンドなのでぜひここで開催してほしいと思いました。ロケットの射場もできましたし、串本町から最先端の技術を広めていってほしいですね」と話します。

自動運転車の充電用に、自治会館の電気が利用できるように手配をしてくださったり、グラウンドの草刈りをしてくださったりと、自治会の方々にもたくさんのご協力をいただきました! 中湊地区のみなさん、ありがとうございます!

熱さに弱いセンサー トラブル対応の実践訓練

トレーニング会では、車両と、グラウンドから直線距離で500mほど離れた場所にある串本町古座分庁舎に設置した2つのGPSを使用し、車両の位置を数㎝単位で特定。車両の屋根に取り付けたセンサーと、GPSの両側面から正確なマップを作成しました。センサーは、飛び出してきた人を検知してブレーキをかけたり、道路状況を把握するために使用します。しかし、グラウンドの草に反応したり、南紀の厳しい直射日光でヒートダウンを起こし、のっけからトラブル対応の実践訓練が行われました。

訓練は期間中9時〜17時のスケジュールで行われましたが、その間にも、自治体、警察関係者、地域の方がひっきりなしに見学に訪れます。来場してくださった方には未来の交通をぜひ体験して欲しいと乗車いただきましたが、ヒートダウンでお待ちいただくという状況も。見学者をお待たせしている状況で、大汗をかきながらのトラブル対応が一番の訓練になったのかもしれません。

自動運転体験学習で地元高校生が最先端技術に触れる

たくさんの方のご協力を得て、開催に至ったトレーニング会。少しでも地域に恩返しができれば、と地元高校の希望者を対象に自動運転体験学習会を開催しました。参加したのは、串本古座高校の男子学生4名。自動運転について学習後、マップを作成。作成したマップをもとに、グラウンドを自動走行させました。

生徒4人が話し合って決めた走行ルートは、ハート型。ルートをトレースする動作に歓声があがっていました。参加した生徒からは「普通の車と変わらない走り。いろいろなことに活用できそう」「リニアモーターカーとかは都会の人しか体験できないけど、自動運転は田舎や高齢者でも使えるテクノロジーだと思った」「イメージしていたより、繊細な動きだった」「システムに興味がある。知識を身につけたら自分にもできそう」など、感想を語ってくれました。学校から約10キロの道のりを自転車で駆けつけてくれた生徒もいて、最先端技術への期待を感じることができました。ここから未来のエンジニアが生まれるといいですよね。

最初に資料を使用して自動運転の講習
ハート型のルートを実車して体験

参加者も驚く地元の期待

盛況のうちに終了したトレーニング会。自動運転車に関わるエンジニアのニーズ拡大に比例し、今後も開催する予定となっています。部署ができて初めてのプロジェクトを準備・運営した2021年新卒入社の山口千晴さんは、「5日間の研修期間中、約50名もの方々が見学に来場され、熱意を感じました。準備で何度も串本に来ましたが、地元の方は先端技術への理解があって、協力的ですね。串本町は、これから最先端技術の集積地になる可能性があります。地方創生の取り組みとして、MaaSのプロジェクトとして、これからも地域の方々に最先端技術を紹介していけたらと思います」と話しています。

また、研修に参加した4名からは、「来場される方の数がすごい」「地域の人に注目されているのがわかりました。MaaS事業への期待が伝わって、串本ならこの技術が活躍できると感じました」「自動運転車が、いつか地域の足になるといいなと思います」との声が聞かれました。

今回は、地方創生・MaaS事業推進課が主催する事業を、地域との繋がりという視点でご紹介しました。

地方創生の事業は日本全国で展開されていますが、採算化・地域との調和が大きな障壁となって持続させることが難しいと言われています。今回の「自動運転車の社員向け取扱トレーニング会」は、地域との連携を図る小さな一歩に過ぎません。しかし、見学者が約50人も参加するなど、OSTechの事業を熱い視線で見つめてくれている地元の方がたくさんいます。

さらにこれから、南紀スーパーシティ構想や民間小型ロケットの発射で、エンジニアのニーズも高まることが予想され、南紀での取り組みは引き続き推進される予定です。本州の最南端でOSTechがどんな役割を果たすのか、今後も目が離せません!

トレーニング会の開催に協力いただいた地元の企業・団体をご紹介

地域を活性化させるため、さまざまな活動が行われています。
今後も、OSTechの地方創生の取り組みとあわせて、南紀で共に活動する地域のみなさんです!
南紀に行く機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。

サテライトオフィス古座
古座街道沿いにあるシェアオフィス。空き家対策として、京都大学の学生がリノベーションや耐震対策を施した。今後、ワーケーションの基地となる予定。

一枚岩 Camp & Food monolith
過疎化が進む故郷古座川町を変えるためにオーナーが会社を立ち上げ、20代1名、30代3名の若手4名で運営しているカフェ。地元の高齢者が集まったり、ドライブ途中に観光客が立ち寄るスポットとなっている。カフェの背後にある古座川の一枚岩は、日本最大級のもの。

和歌山県ふるさと定住センター
和歌山県への移住を希望する人たちが定住できるように、住居や地域の行事を紹介している。「南紀はおおらかな人が多い。新しいもの好きなので、最先端技術のエンジニアの方のワーケーションや移住にお勧めです!」。相談員を務める3人も東京や大阪などからの移住者。

大江戸温泉物語 南紀串本
研修参加者のため、受け入れ協力をしてくれた宿泊施設。「串本町は海や川、山など多くの自然がすぐ近くにあるのが魅力です。最先端技術が串本に集まって、活性化の起爆剤になってほしい。自動運転車で観光できればいいですよね。その癒しの場になりたいです」と支配人代理の平さん。

#Tag

関連記事

Read

【SS】顧客の期待を超えた仕事をする。それが一流エンジニアの条件です

Read

【鳥人間コンテスト大会レポート】大応援団のエールを”力”に 総力を結集して大空へ

Read

【イベントレポート】第1回 建設DX展に出展しました!